同居相手は黒猫くん
キスの理由
思考が完全に停止する。
「ほら、抵抗する暇もなかっただろ」
なんて表情を変えずに言ってくる刹の言葉なんか耳に入らなかった。
い、今のは……。
紛れもない、キス……だよね。
「…な、なんで」
「?」
「なんでそんなこと簡単にするの…?」
「え、比乃、」
「私…初めてだったのにぃ〜〜…」
次々と溢れてくる涙を気にせず、私は刹の前で泣いた。
からかって。
またからかって。
キスまでするなんて……!
「ばかぁ〜〜…!」
「な、泣くのかよ…」
オロオロと珍しく慌てる様子を見せる刹。
私が流す涙を袖でゴシゴシ拭ってくれた。