同居相手は黒猫くん
「ただいま、お父さん」
お父さんの写真の前に座って、いつものように挨拶をする。
と、
「…あれ?」
お父さんの写真立ての隣に、女の人が写った写真立てが置いてあった。
写真立ての後ろには、お父さんと同様に花瓶が添えられている。
「それ、俺の奥さんだった人だよ」
私の隣にしゃがみ込んで、佐伯さんが微笑む。
「病気で亡くなっちゃってね」
そんな佐伯さんの横顔を見て、私は何を言っていいかわからなくなってしまった。
そうか……、
佐伯さんも奥さんを亡くされたのか……。
「でも、君のお母さんと出会えて、本当に良かったよ」
そう佐伯さんは笑顔で言うと、立ち上がってリビングに出て来ていたお母さんの手を握った。
「もちろん君のお父さんのことも、俺の奥さんだった彼女のことも、忘れないよ」
佐伯さんは私の頭を撫でて続ける。
「でも、君のお母さんのことを愛してる。
……もうなくさないようにするよ」
私は思わず、
……涙が出そうになった。
理想の夫婦だな、と。
本当に幸せそうに笑う二人を、ずっと見ていたくなった。
……この人がお母さんの再婚相手で、本当に良かったなぁ。