君に、メリークリスマス
春が過ぎ、
夏が…終わり。
秋は流れ…、
そしてまた、冬が…訪れて。
クリスマスも…近くなった頃。
空からは…雪が、降ってきた。
初雪は、猛吹雪で。
教室の窓が、ガタガタと揺れる度に…
ビクッと、体が反応した。
部活を終えて、学校から帰る頃には……
もう、道路に雪が積もっていて。
街中の人達が…片付け作業に、勤しんでいた。
「寒い~……!」
女子中学生必須の黒ストッキングは、樹氷のように…真っ白になって。
マフラーと、
コートと、
手袋と、
それから…ブーツ。
全身防御、用意周到な女子のグループは、暖を求めるかのようにして…寄り添って。
容赦ない風に、キャーキャーと声をあげながら、帰路についた。
歩いていくその先に…
男子の集団。
スニーカーに、
…制服向きだしの…姿。
なのに、全く動じることなく、平然と笑い声を上げて。
列を乱しながら…歩いていた。
「……男子はバカだねえ。」
「……だね。」
君がそこにいることに…気づいていたけれど。
久し振りに見る屈託ない笑顔に…
心がじんわり、温かくなった。
道端に薄く積もった雪を集めての…
雪合戦。
……が、
「わ……、あっぶね…!」
君が避けた雪玉が……
こっちに、飛んでくる。
余りにも唐突過ぎて。避ける暇も…なかった。
ものの見事に…、顔面へと、直撃。
「バッカ、女子に当たったじゃんよ。」
君は『お返し』と言わんばかりに。
素手で雪を掴んで……
硬く握ったソレを次々と投げ返した。
もちろん、それは…倍返しされて。
突進してきた男子と共に…
君も、転ぶ。
「……………イタイ。」
だから、何故にさっきから…私が犠牲になるの?
運悪く、
私のブーツの上に…君の頭。
「……ごめん…。」
流石に…悪いと思ったのだろう。
仰向けになったまま、君は真顔で…謝った。
「………。ん。」
私は手を差し伸べて…
君が、私の手袋を掴む。
「「……あ。」」
手袋が、すぽっと…抜けてしまった。
差し出したままの手を、引っ込めるタイミングを…失って。
けれど君は、迷わずまた…
手を伸ばした。
ヒヤリ、と、背筋が凍りつく程に…
冷たい手。
「……なんで手袋しないの?バカじゃん?」
「………。お前の手…。温かい。カイロか?」
久し振りに…口をきいた。
無視されるかって…思ったけど。
されなかった。
「…温めてくれる人がいれば、それでいーじゃん。」
それは…一体誰?
そんな疑問を残したまま。
呪文のように…
その言葉が、谺する。