それでも出会えてよかったと思えるんだ
さっちゃんは、私の方に向き直り、深々と頭を下げた





入社して一年たって、私は急に忙しくなった企画営業部に異動になった



慣れない仕事、異動させられた自分に自信がないまま仕事をしていた私だったので、見事にミスをした



そこで、当時上司のさっちゃんと、お客様のところに一緒に謝りに行ったことがあったから、さっちゃんが頭を下げるのを見たのは初めてじゃない



あの時は、部下のミスなのに、潔く頭をさげてくれて、その後、お小言も言わず、近くの喫茶店に連れていってくれて、涙を浮かべながら落ち込む私に言ってくれた



『失敗は誰でもする。でも、そのしまったって気持ちが自信に繋がっていくんだ。その気持ちを忘れなければ、きっと成長する』



そういって、

『ここのパフェの味も忘れるなよ』

って、大の大人の男が自分の分と私の分のストロベリーパフェを頼んで、凄くおいしそうに食べていた



あの日のさっちゃんは、かっこよかった


もう二度と、この人に頭を下げて欲しくないと思って頑張った



今、私に頭を下げるさっちゃんを見ると、あの日と同じ人には見えなかった

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