Because[短篇]
「志保。」
その心地よい声で、
名前を呼ばれると私はどうしても逆らえなくなる。
…あぁ、これってやっぱり
「…良いよ。」
「…は?」
「だから、良いよって。」
コレって恋してるって
ことじゃない?
見つめ合う私達。
ただ視線を合わせるだけ
匡がゆっくりと近づき、私の顎を持ち上げる。それはキスの合図。私はゆっくりと瞼を閉じようとした…。
が!
「…ん?ちょっと待った!」
「あ"ぁ?!」
残り数センチの所で
匡の口にストップを掛ける。
ピキっという音が聞こえたのは、
気のせいにしておこう。
「海ちゃんは?…匡、海ちゃんが好きなんじゃないの?」
「は!?意味わかんねー」
だって、
あんなに楽しそうに話してたじゃんか
頬染めて話してたじゃんか
私はぷくっと頬に空気を入れて、匡を睨む。
その瞬間、今まで収まっていた匡の悪魔が再び現れたかのように大きく目を細めた。そして口元を吊り上げた。
「あぁ、ヤキモチね。」
「なっ!違う!」
「照れんなよ。俺が好きなんだろ?」
…くっそ。
調子乗ってる!絶対調子乗ってる!!