Because[短篇]



足元で聞こえた、何かが割れる音と、誰の小さな叫び声。私は驚いて猛スピードで動かしていた足を止め、下を向いた。



「…あー、やってくれたね。」

「え、え?」




私の足元を指差しながら、
脱力したその男。
…つまり匡。




ゆっくりと持ち上げた足の下には透明なガラスのような破片。




「それ、コンタクト。」


コンタクト!?
も、も、もしかして…



「粉々。」



無残な姿で廊下でキラキラ光るソレ。
匡はメガネを直しながら私の足元からソレを拾う。



「す、すいません」

「…弁償。」

「はい?」



この日、私は匡のあのニヤっと何かを企んでいるような瞳に捕まった。



















「あー、あんなことがなきゃ。」



きっと私の中で匡は格好良くて、
スポーツ万能で、っていう良い印象で終わっていたのに。


今じゃ悪魔だ。



コンタクトの弁償と言われ、
こき使われ1年。


未だに開放されていない私って…。






「おばちゃーん、メロンパン1つ。」

「はいよ!これ、最後の1つだよ。」



良かったー!
コンビにまで走ることにはならなそうだ。










行きとは正反対にトボトボと
同じ道を引き返す私。



思い出すのは教室にいる出であろうあの2人。



お似合いだったな…
うん、美男美女。




< 5 / 16 >

この作品をシェア

pagetop