Because[短篇]
足元で聞こえた、何かが割れる音と、誰の小さな叫び声。私は驚いて猛スピードで動かしていた足を止め、下を向いた。
「…あー、やってくれたね。」
「え、え?」
私の足元を指差しながら、
脱力したその男。
…つまり匡。
ゆっくりと持ち上げた足の下には透明なガラスのような破片。
「それ、コンタクト。」
コンタクト!?
も、も、もしかして…
「粉々。」
無残な姿で廊下でキラキラ光るソレ。
匡はメガネを直しながら私の足元からソレを拾う。
「す、すいません」
「…弁償。」
「はい?」
この日、私は匡のあのニヤっと何かを企んでいるような瞳に捕まった。
「あー、あんなことがなきゃ。」
きっと私の中で匡は格好良くて、
スポーツ万能で、っていう良い印象で終わっていたのに。
今じゃ悪魔だ。
コンタクトの弁償と言われ、
こき使われ1年。
未だに開放されていない私って…。
「おばちゃーん、メロンパン1つ。」
「はいよ!これ、最後の1つだよ。」
良かったー!
コンビにまで走ることにはならなそうだ。
行きとは正反対にトボトボと
同じ道を引き返す私。
思い出すのは教室にいる出であろうあの2人。
お似合いだったな…
うん、美男美女。