Because[短篇]
私の手からメロンパンを奪い、そして唖然とする私に向ってその口を開いた。
「今日俺ん家ね。はい、決定。」
「は!?勝手に決めないでよ!」
「お前に相談する意味がねーし。」
それだけ言うと、匡は自分のクラスへと戻って行った。帰り待っとけ、という言葉を残して。
教室から出るとき、
満面の笑みの海ちゃんが、匡の背中を思いっきり叩いているのが目入った。
それに少し頬を染める匡。
「…意味分かんない」
私にだけ、意地悪なのも
海ちゃんに頬を染めるのも
毎日私をからかうのも
分からない。
そして、一番分からなかったのは、何で私の頭の中から匡と海ちゃんの姿が消えてくれないのか、ということだった。
「佳枝ー…」
「何!?」
教室に戻ってきた佳枝に抱きつく。
なんか、私変!!
「んー、やっぱりね。」
「やっぱり?」
佳枝は少しも驚くことなくにこりと笑みを落とす。何処か予想はしてました、みたいな顔で私を見る。
「私は良く分かるけどね。竹之内君の気持ち。」
「へ?」
「志保は、鈍感なの。」
自分で気付きけ、っと私の肩を叩き佳枝は笑いながら自分の席へと戻っていってしまった。丁度良く入ってきた先生のせいで、私は佳枝の背中を見つめることしか出来なかった。