シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
やっぱり、何かおかしい。いつもは脱ぎっぱなしか、わたしに預けるのに断るなんて有り得ない。


そして、わたしの横を通り過ぎた時、グレーがクロになった。


……甘い香り。


わたしの持ってる香りじゃないし、これは絶対女ものの香水。


わたしの頭の中で、瞬時に組み立てられるパズル。


7時……帰ってこない。
起きてる……怒られる。
コート……渡してくれない。
匂い……甘ったるい香り。


もう完全に浮気だと思った。だからって、単刀直入に聞けないわたしがいる。


もし万が一、本当に仕事だったら……?もし、浮気を認めたら……?


そんな考えをしていると、先にリビングへ行ってたけいちゃんが廊下に戻ってきた。


「なぁ、なにあのすごい料理」


そっか……。けいちゃんは忘れちゃったんだね。


わたしたちの結婚記念日。


そんな日に女とイチャイチャしてきたの。


泣きたい気持ちをグッと堪え、笑顔でけいちゃんに言う。


「今日、特売日で!たくさん作り過ぎちゃったの」


あなたは、これが嘘だって分かんないんだろうね。


「ふーん、それにしたって作り過ぎだろ。誕生日でもないのに、ケーキまで作って」


ほら、分かってない。

< 5 / 44 >

この作品をシェア

pagetop