シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
けいちゃんにとって結婚記念日は、どうでもイイ日になっちゃったんだね。


わたしたちは、〝イイ夫婦になろう〟と言って籍を入れたのに、3年で終わってしまうんだろうか……。


「……うん、ごめんなさい。明日、梨江子のとこにでも持っていくね」


梨江子こと、加賀見梨江子(かがみりえこ)は、わたしの高校時代の親友。


最近、ご近所さんになった。


「あぁ。じゃぁ俺、シャワー浴びるから寝てろよ?」
「……うん、分かった。おやすみ」


脱衣所に消えていってしまった、あなた。すごく近いのに、遠くへ行ってしまった気がした。


「まだ、泣いちゃダメ。がんばれ、わたし」


手早く料理を片付けてると、ふと目に入った、けいちゃんの携帯。


テーブルの上に置かれていて、わたしは震える手で携帯を取ってしまった。


今まで、携帯を見たことなんてない。でも、梨江子が言ってた。


〝見る時は、覚悟した上で見なきゃダメだよ〟って。


大丈夫……。覚悟なら、できてる……。


幸いにもロックはかかっていなくて、もしかしたら浮気なんかしてないのかもと、期待してる自分がいた。


でもメールを開けば、〝有美子〟という人とのやり取りが多いことに気付き、メールを開いた。


今日のやり取りでも、その有美子がいる。


「あはは……。完全にクロじゃん……」


なぜだか、笑いが込み上げてくる。


なんだろう、人ってこんな極地に立たされたら、頭もぶっ壊れるんだろうか。


有美子からのメールは、【奥さんにバレてない?大丈夫?バレた時は、わたしが責任取ってあげる!】【今日のエッチも愛を感じたよ~】とか、そんな内容のメールで。


けいちゃんのほうを見れば、【あいつドンクサイから、バレないよ。でも、バレた時は責任取ってもらおうかな。笑】【有美子とのエッチたまんない。好きだよ、愛してる】なんて、そんなメールを送っていた。

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