シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
ビクッと身体が強張り、気付かれたと思いきや、どうやら気付かなかったらしくホッと胸を撫で下ろした。


けど、その直後近くにけいちゃんの気配を感じ、そのまま寝たふりをしていると左頬にキスをされた。


「……彩月、好きだよ」


そんなけいちゃんの言葉は、ウソだと思ってしまう。


けいちゃん、ごめんね……。もうわたし、けいちゃんの言葉を信じられない……。


けれど、けいちゃんの髪を撫でるその指が心地良くなってきて、わたしはそのまま意識を手放した。


朝、携帯のアラームが鳴り、目が覚めた。けいちゃんを見れば、まだ寝ていて、わたしだけベッドを降りキッチンへと立った。


どんなにイヤなことがあっても、必ず朝は来る。


昨日の出来事が夢であってほしいと願い、転送したメールを見る。


「うん、やっぱり夢じゃないんだな……」


これは、現実だと、自分に言い聞かせる。


卵を割り、卵焼きを作る。ウィンナーに切れ目を入れ、ウィンナーを炒める。


ブロッコリーを茹で、ミニトマトを入れ、魚を焼いて、お弁当箱に詰めた。


いつもの、手抜き弁当。


「これが、ダメだったのかな…」


何が原因か分からないまま、けいちゃんを起こす時間になってしまった。


「けいちゃん、朝だよ。起きて」


そう言って優しく起こすと、ゆっくり目を覚ましたけいちゃんはガシッと、わたしの腕を掴みそのまま引っ張られると、けいちゃんの胸へとダイブしてしまった。

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