大キライ。
「一目惚れ」
そう自分で言って
湊は少し悲しい顔をした
それは、一目惚れという理由が、自分で不純だと思っているようで
そこが違う
今まで一目惚れだと言って栞に近づいてきた男はたくさんいたけど
その人たちの一目惚れは、まるで栞を物として見た好きとしか思えなかった
だって、「好き」なのに、栞を知ろうとしないから
栞の何も知らない、ということにすら、気づいていなかった
あの人たちは、本当に栞という物が好きで、ただ彼女にしたかっただけだと
あたしは勝手に思ってる
でも彼は、違うと思った
栞のこと、知らないことが悲しくて、知りたいと思ってる
わかってあげたいという、気持ちがある
だけど彼はもう、少し理解しているんじゃないかな
栞のこと
栞と聖とあたしの関係
栞が今、どんな状態であたしたちと
聖と、一緒にいるのか
彼はもう気づいてる
それを変えようとしている
それはもう愛だね
彼は本当に栞のことが、好きで、好きで仕方がないんだ
だって彼は言った
あたしに、ありがとうと
一目惚れでよかったと
好きになってよかったと
そのときの、彼の赤くに染まった瞳を見て
聖、あんたもあの瞳を見て
やばい、と思ったんだ
いつか湊はあたしたちの関係を壊して
栞を檻から外へ
出す人に、なるかもしれない
聖が栞と繋がるために苦し紛れに作った檻
それはもう
崩れかけてる
ごめんね聖
あたし、湊をいい奴だと思ったよ
聖も本当は、そうなんでしょ
だから
栞が彼を
好きになるかもしれないと、思った
だから必死に二人を離そうとする
自分の檻を、守るために
崩れかけた檻にあたしは拍車をかけてしまった
彼に
檻を開ける鍵の欠片を、与えてしまった
ごめんね、聖
なのにあたしは
教えたことを
後悔してる