大キライ。
「完敗?」
「まだだ」
「まあがんばって」
「おまえなあ」
まるで他人事のように言う唯だけど
教室に押しかけるよう俺に言ったのは他でもない、こいつだ
「まぁ栞は押しに弱いから、毎日根気強く行くことだね」
そう言って俺の隣でスキップを始める呑気なやつ
それでも
俺のために、情報をくれたり
俺のことを
瑞穂のことを、まるで自分のことのように考えてくれる
「栞のためだからね」
「………」
「いっとくけど、あくまで栞のためだから」
「うん、ありがとう」
そんなこと、わかってる
今更だった
けど唯は、俺の応えに少し驚いていた
「…別に、あんたのためではないんだけど?」
「うん?だから、瑞穂のためにありがとなって」
「…あんた、よくありがとう言うよね」
「そう?普通だろ?」
「……きもいよ」
「ああ?」
俺はまだ瑞穂を好きになったばかり
聖の存在はあったけど
焦ってはいなかった