墜ちる絵の具は青 [短]
テロリストに動きはありません。
邪魔が入ることなく順調なのでしょう。
私達が死ぬのも時間の問題です。
アンナちゃんは何も知らずに
私の絵を眺めていました。
「じゃあ次は私を描いて。」
「いいよ。」
私はアンナちゃんとスケッチブックに
交互に目にやって描きました。
もし私が絵描きを諦めて
両親の言うように医者になっていれば
こんな風に死ぬ事は無かったのでしょうか?
私は痺れた頭のなかで考えていました。
「アンナちゃんは大きくなったら
何になりたいの?」
「あのね、綺麗なお嫁さんと
俳優とケーキ屋さん!」
「そんなんだ。きっとなれるよ。」
私は微笑みました。
アンナちゃんはにっこり笑いました。
私はアンナちゃんの絵を描き進めていました。
しかし少しずつ視界が揺れ始めてきました。
「…お兄ちゃんどうしたの?」
「ん?何でも無いよ。」
私はそう言った後
スケッチブックに水滴が落ちたことに
気付きました。
「あ……」
涙か。
「お兄ちゃん、恐いの?」
「いや、ちが…」
「大丈夫、警察が助けに来てくれるよ。」
アンナちゃんは微笑みました。