記憶の本〈母の中の私〉
翔ちゃんに初めて会ってから一年ちょっと経った頃、私にとって忘れられない出来事が起こった。
あの日は、綾野の17才の誕生日だった。
学校からの帰り道、お誕生会やるからと綾野の家に誘われのだ。
綾野は恥ずかしそうに、
「お母さんが、お誕生会やるって煩くてさぁ・・、朝からケーキの準備だの、料理は何にするだの、私は小学生かっ!って感じなんだよね。」
そう言って、軽くため息をつきながらこぼしている。
「良いお母さんじゃん!なんか綾野のお母さんって二時間ドラマに出てくる“THEお母さん”って感じだよね。」
「はぁ?何それ。」
怪訝な顔で聞いてくる綾野に、私はオーバーアクション付きで答えた。
「白いエプロン着けて”綾野ちゃんおかえりなさい、さぁ由美ちゃんも上がって!今ちょうどクッキーが焼けたところなのよ”みたいな!」
笑いながら綾野をからかう私に、一気に不機嫌になった綾野は、
「今日も翔ちゃん来るからと思って由美の事誘ったけど、そんな事言うなら来なくていいよーだぁ!じゃあね。」
そう言って、顔の横で手をヒラヒラさせた綾野は、先にスタスタと歩き出した。
あの日は、綾野の17才の誕生日だった。
学校からの帰り道、お誕生会やるからと綾野の家に誘われのだ。
綾野は恥ずかしそうに、
「お母さんが、お誕生会やるって煩くてさぁ・・、朝からケーキの準備だの、料理は何にするだの、私は小学生かっ!って感じなんだよね。」
そう言って、軽くため息をつきながらこぼしている。
「良いお母さんじゃん!なんか綾野のお母さんって二時間ドラマに出てくる“THEお母さん”って感じだよね。」
「はぁ?何それ。」
怪訝な顔で聞いてくる綾野に、私はオーバーアクション付きで答えた。
「白いエプロン着けて”綾野ちゃんおかえりなさい、さぁ由美ちゃんも上がって!今ちょうどクッキーが焼けたところなのよ”みたいな!」
笑いながら綾野をからかう私に、一気に不機嫌になった綾野は、
「今日も翔ちゃん来るからと思って由美の事誘ったけど、そんな事言うなら来なくていいよーだぁ!じゃあね。」
そう言って、顔の横で手をヒラヒラさせた綾野は、先にスタスタと歩き出した。