記憶の本〈母の中の私〉
ぶつかった衝撃で危なく花束を落としそうになったが、間一髪の所で花束は私の手の中に収まっていた。

私は、ぶつかってきた奴の顔を見てやろうと顔をあげた瞬間、心臓が飛び出そうになった。

相手も私の顔を見てかなり驚いている様だ。

「あーっ由美ちゃん!大丈夫?怪我しなかった?」

目の前に登場現れた翔ちゃんに動揺して、どうしていいか解らず、でも心臓のドキドキが聞こえるんじゃないかとハラハラしながら、

「えっ、はい、だっ大丈夫です・・、花束も無事です・・、えーっと天気いいですね・・」

訳の解らない事を口走っていた。

言ってしまった事に後悔しながらも、私は恥ずかしくなり、下を向いたまま動けなくなる。

そんな私の姿を見た翔ちゃんは、笑いを堪えながら、

「由美ちゃん、何か動揺してる?急に俺登場でびっくりしたんでしょう!だよね、俺もかなりびっくりしたもん。」

そう言って、ペロッと舌を出しながら笑っていた。

その姿に私の心臓はありえないほど高鳴った、壊れるんじゃないかと思うくらいドキドキしていた。

「由美ちゃんも、綾野の誕生日パーティ行くんでしょ!俺もそうなんだ、それで此処に花頼んだって訳」

そう言って又私に笑いかけると、翔ちゃんは店員さんに話しかけた。

「すいません、電話した田口ですけど花出来てますか?」

< 24 / 33 >

この作品をシェア

pagetop