記憶の本〈母の中の私〉
綾野のプレゼントをどうするのか気になった私は、店を出た翔ちゃんに話しかけた。

「あの〜、誕生日プレゼントどうするんですか?」

「う〜ん・・、他になんか探すよ、とりあえず時間まで。」

私は、左手にしている腕時計を翔ちゃんに見える様に指差しながら、

「もう時間無いですよ、今三時四十分です!」

「えっ、うそ!」

びっくりした翔ちゃんは、自分のしている腕時計で時間を確認すると、軽くため息をついた。

「やばいなぁ・・、どうしよう・・、ケーキかぁ?いや叔母さんが作ってるかぁ、じゃあプラモデル?いや男じゃないしなぁ、あっ絵本!小学生のガキじゃないしなぁ・・」

ブツブツ言いながら翔ちゃんは必死に考えている様だが、その考えている顔がクルクル変わって、私はおもわず吹き出してしまった。

「由美ちゃん、笑い事じゃないよぉ〜!俺これでも凄く真剣に考えてるんから。」

吹き出している私の姿を見た翔ちゃんは、そう言って苦笑いを浮かべている。

「ごめんなさい、子供みたいでつい・・、あっそうだ!このお花二人からのプレゼントにしませんか?元々は翔ちゃんの物だったんだし、どうですか?」

私の提案に目をキラキラと輝かせて、翔ちゃんは子供みたい笑顔を浮かべた。
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