記憶の本〈母の中の私〉

沖縄の海。

学校につくとすでにチャイムは鳴り始めており、私は急いで校舎に入ると全速力で階段を駆け上がり、自分の教室へ向かった。

この時点でチャイムは鳴り終わっておらず、勢いよく教室のドアを開けると自分の席へ向かい腰を降ろした。

席に着き１つ安堵のため息を漏すと、私の元に倉橋綾野〈ｸﾗﾊｼｱﾔﾉ〉がやって来た。

「おはよー、由美♪ぎりぎりだよ、まったくあんたって子は!」

ちょっと呆れた口調で言いながら、綾野は軽くため息をついた。

「ごめんね、なかなか眠れなくて朝起きたらぎりぎりだったわ。」

私は軽く舌を出しながら、笑ってみせた。

綾野はちょっと困った顔をしながら、私に近づいて来て「例の話だけどさぁ〜、」と私に耳打ちをしてくる。

その時、ガラーッと教室のドアが開いて担任が教室に入ってきた。

慌てて綾野は、「後でね!」そう言い残し自分の席へと戻って行った。

私も軽く綾野に手を振り、ふっと窓の外に視線を移す。

窓の外は抜けるような青空で、気持ち良さそうに蝶々が２匹仲良く飛んでいた。

《こんな天気のいい日は、教室飛び出して、海行って遊びたいなぁ♪去年家族でいったみたいに・・・。》