メロディフラッグ
♯1
初めてピアノを弾いた記憶は、遥かかなた。多分三歳くらい。兄の陽平が弾いてるのを見て、何となく楽しそうだと思いはじめた。
正に、見よう見まね。



次郎は鍵盤の上にそっと手を置き、思い巡らせていた。
初めてピアノを弾いたとき。

初めて発表会に出たとき。


初めて入賞したとき。




初めて、汀にあったとき。




何もかもが遠い過去に感じた。


まさか、そんなことない。自嘲する。汀に初めてあったのはこの春のことだ。さあ、もう余計なことを考えるのはやめだ。今から最高に楽しいときが訪れるのだから。





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