メロディフラッグ
♯2
時任の家の最寄り駅は、普通しか停まらない小さな駅だ。
駅のまわりも繁華街なんかじゃなくて、閑静な住宅街が広がっている。
次郎は横浜の中心部に住んでいるから、この駅に降り立つ度にタイムスリップしたようなふしぎな気持ちになる。
ぺしゃんこのカバンには、学校で配られたプリントが2、3枚と、ペンケースと、楽譜。
軽い軽いカバンを手に駅の改札を出ると汀にあった。
気付いてないふりをして通りすぎよう。次郎は思った。面倒なことは嫌いだ。
目を逸らそうとしたのに、コンマ一秒遅かったようだ。
うっかり目があってしまった。
次郎はこころの中で舌打ちをする。
汀は笑顔でかけよって来た。
「こないだはどうも」
「いえいえ…」
口をうごかすのさえ億劫だ。だいたい女は余計なことをぺちゃくちゃ際限なく話す。
「今から先生のところ?」
「ああ。自分は?」
「あたしも。先生が使ってないほうのレッスン室で練習していいって云ってくれたから」
それ以上汀は何も云わなかった。余計なことをペラペラと話さない点は好ましいと次郎は思った。
駅のまわりも繁華街なんかじゃなくて、閑静な住宅街が広がっている。
次郎は横浜の中心部に住んでいるから、この駅に降り立つ度にタイムスリップしたようなふしぎな気持ちになる。
ぺしゃんこのカバンには、学校で配られたプリントが2、3枚と、ペンケースと、楽譜。
軽い軽いカバンを手に駅の改札を出ると汀にあった。
気付いてないふりをして通りすぎよう。次郎は思った。面倒なことは嫌いだ。
目を逸らそうとしたのに、コンマ一秒遅かったようだ。
うっかり目があってしまった。
次郎はこころの中で舌打ちをする。
汀は笑顔でかけよって来た。
「こないだはどうも」
「いえいえ…」
口をうごかすのさえ億劫だ。だいたい女は余計なことをぺちゃくちゃ際限なく話す。
「今から先生のところ?」
「ああ。自分は?」
「あたしも。先生が使ってないほうのレッスン室で練習していいって云ってくれたから」
それ以上汀は何も云わなかった。余計なことをペラペラと話さない点は好ましいと次郎は思った。