メロディフラッグ
沈黙が苦痛じゃない。
二人で、のんびりと時任の家まで歩く。
夕日が道の向こうに見える。眩しくて目を細めた。ちらりと隣を見ると、汀も目を細めていた。




その姿に、はっとした。



きれいに通った鼻筋と、柔らかそうな頬を中心に、彼女の顔がオレンジに染まる。



「ねえ、」
気付けば口に出していた。

汀が見上げる。次郎は背が高いので、大抵の人は彼と話すとき見上げる必要があった。



「彼氏とか、いんの?」


自分でも何を聞いてるんだ、と思った。第一聞いてどうするんだ。自分にだって彼女がいる。


「いないよ」


その答えに、ほっとした自分に呆れた。



「でもねえ、ずーっと好きな人はいるんだ」


オレンジ色の光の中で、汀はとびきりの笑顔で云った。可愛かった。




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