Polaris
そして、あたしも自分の名刺を取り出す。


名刺の裏にプライベートの電話番号を書き、輝に渡す。


「よかったら、電話して」

「サンキュー」


輝はあたしの名刺を胸ポケットにしまう。


「そろそろ、店に戻らねぇと」


あたしはボーイにチェックをしてもらい、輝のことを外まで見送る。


「なぁ、、未来(ミク)」


この街に来て初めて、自分の名前を呼ばれた。


ミライと呼ばれることの方が多くて、自分の名前さえ忘れそうになっていた。


「なに?」

「お前はこの世界に染まるなよ」


そう言うとあたしのことを抱きしめた。


温かい。


人はこんなにも温かいんだと、改めてわかった。


抱きしめられながら、空を見る。


やっぱり空には星の1つもなくて、それでも何故か前みたいな気持ちにはならなかった。


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