Polaris
そんなあたしに気付いた隼人がソッと手を差し出す。


それを見て、少し笑ってしまう。


わかりにくいけど、隼人なりに気を使ってくれたのだろう。


その手に、あたしは自分の手を重ねた。


太陽はないのに、夏のジリジリとした暑さがまだ残ってる。


暑いのが嫌いなあたしにとって嫌なはずなのに、この手を離したいとは思わなかった。


こうやって隼人と歩くのは、きっとこれが最後。


だから少しでも、隼人に触れて居たかった。


でも、その手は簡単に離されてしまった。


「隼人!」


人混みの中なのに、何故かその声はとても鮮明に聞こえてきた。


隼人はまだ、その声に気付いていなかった。

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