Polaris
見えなかったもの
~ 未来 ~


「お疲れ様」


事務所に戻ると、榊原さんがあたしに声を掛ける。


「今まで、ありがとうございました」


あたしは榊原さんに頭を下げる。


「はい、今日の分」


そう言い、お金の入った封筒を渡す。


これで母親の借金も返し終われる。


この街にあたしがいる理由もなくなる。


封筒の中から、少しの金額を取り出す。


「これ、ミルクちゃんに」

「行かないのか?」


お金を渡すと、榊原さんに聞かれた。


あそこに行くつもりはもう、ない。


「行けないです。だから、代わりに1番高いお酒開けてください」

「わかった」

「お願いします。それじゃあ、あたしはそろそろ」


そう言うと「今まで、お疲れ様」と、榊原さんが言ってくれた。


それに頭を深く下げ、部屋から出た。

< 304 / 345 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop