Polaris
あたしの生まれは、今居るこの街。


でも、あたしが育った場所はこの街とは似ても似つかない場所。


4歳の時、母親が初めて「旅行に行こう」と言った。


休みの日に何処かに連れて行ったこともない、母親の言葉にあたしは喜んだ。


それが母親と行く、最初で最後の旅行になるとも知らずに。


初めて乗った新幹線に無邪気にハシャいで居たのを、今でも覚えている。


電車を乗り換え着いた場所は、何もない街だった。


旅行と言われ、遊園地や動物園を想像してあたしは落ち込んだ。


それでも、母親を過ごせるならそれだけでいいと自分を納得させた。


何もない街を母親と手を繋いで歩いた。


見渡しても田んぼや畑しかない場所。


どうしてここに来たのか、わからなかった。

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