Polaris
どれくらい歩いたかわからなかったけど、この街には似合わないお店の様な場所で母親は立ち止まった。


母親はお店とは違う入り口のチャイムを鳴らした。


そのドアから母親と同じくらいの年の女の人が出て来て、中に招き入れてくれた。


これが初めて百合子ママに会った日だった。


今思えば、母親も百合子ママも凄く綺麗な人だったと思う。


百合子ママは、今でもとても綺麗な人だけど。


「本当にそれで良いの?ひろ子は後悔しないの?」


何度も、何度も百合子ママが母親に聞く。


それに母親は「仕方ないの」と、繰り返していた。


なんの話をしているのか、幼いあたしにはわからなかった。


でも母親が口にした言葉に、これから母親と一緒には居れないんだと思った。


「あたしだって幸せになりたいの!!」

「あの子が傍に居たら、あたしは一生幸せになんてなれないの!!」


泣きじゃくりながら百合子ママに言う母親の姿は、大好きだった母親の姿じゃなった。

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