Polaris
いつの間にか日が落ち、百合子ママと話していた母親があたしの傍にくる。


「未来」


そう、いつもより優しい声であたしの名前を呼ぶ。


「ママ?」

「ごめんね、未来?」


それは何へのごめんねだったんだろう。


あたしを捨てることに対しての言葉?


あたしのことを産んだことへの後悔?


「ママ?」


あたしはただ、そう言うことしかできなかった。


そして母親はあたしのことを百合子ママの所に残し、1人で帰って行った。


迎えに来るとか、待っててねとか、そんな言葉はくれなかった。


母親の後ろ姿は何処かスッキリしていて、あたしが見ているのに一度も振り返ることはなかった。

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