私の可愛い泣きべそサンタ
ああ…。

静香は額に手を当てる。

「えっ!三汰くん?!!えっなにどういうことー?!」

まるでアーモンドのような綺麗な瞳をキラキラさせ、サクラは淡く頬を染める。

…とてもじゃないが、彼の顔は見れない。

おそらく絶望の淵から落とされたように固まっているだろうから。

「おい、嘘だろう?静香、家出る前はそんな仕草チラッとも見せなかったじゃねぇか。」

後からのっそりとやって来たガタイの良い男に、静香は素早く目を吊り上げた。

ニヤニヤ顔が更に腹立つ。

「あんたまで降りてくんなバカ兄貴。」

「まぁまぁ、そんな噛み付くなって。これでも悪く思ってんだからー、妹のデート邪魔しちゃって?」

全然悪く思ってないだろう!

そもそもデートじゃないし、と言いたい事は色々あったが、静香には他に気を回さなければならないことがいくつかあった。

…この勘のいいおっさんから、早く彼を引き離さないと。

ちょっとした動作や言葉ですぐ分かってしまうだろう。

彼がこんなやさぐれた妹にではなく、可愛い可愛い自分の恋人に、たまらず会いにきてしまった事を。


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