私の可愛い泣きべそサンタ
ビリビリに散っていく包装紙と一緒に、赤いリボンがはらりと落ちる。
中から出てきた箱の中に入っていたのは、キューブ型の淡い桜色をした、可愛いキャンドルだった。
彼がストンと地面に膝をつく。
ポケットから出された安そうなライターに、三汰はふと顔を上げて彼女に言った。
「違うから。俺たばことか吸わないからね。」
誰もそんなこと疑ってもないのに、この男はペラペラと台所にあったやつだから、ほんと違うからと早口で言い訳を並べる。
はいはい、と静香もゆっくり腰を下ろした。
そんなことは分かっている。
兄のようなタバコ臭さは彼から感じない。
じゃりっと、彼はキャンドルを砂の上に置いた。
ジュボッと安物ライターに赤と青の炎が揺れる。
目の前の男の子の顔が同時に照らし出られて。
静香は手元で淡いオレンジの炎が現れる瞬間、キャンドルではなく、彼の表情ばかり見ていた。
知らない顔だった。
クラスでいつも騒いでいる彼が、こんな顔をするなんて…本当に知らなかった。