私の可愛い泣きべそサンタ
だんだんこの寒さで冷静になってくる。
よくよく考えたら、相手はデカいろうそくだ。
ろうそくなのだ。
静香は不機嫌そうに目を座らせ、次の瞬間、力いっぱい息を吐き出した。
ふーーーっっと。
キャンドルに向かって。
「あっ!?」
一瞬目の錯覚によって身体が暗黒に包まれる。
すぐに他の街頭の光で見えてきた彼に向かって、静香は小さく怒鳴った。
「何時間かかるの!!」
三汰は言われて初めて気が付いたように目を見開いて、あ、と短く声を落とす。
言われてみればそうだ。
目の前のキューブ型の塊は、はじめとほとんど形を変えていない。
すっと静香がキャンドルに手を伸ばす。
怒っているような表情の彼女が、それをどうするのか三汰はただ目で追った。
あんまり怒っているようなので、その辺りに投げ捨てるんじゃないかなんて思ったりもしたが、彼女はただそれを手に収めたまま、よっこらせと立ち上がる。
「寒いから、家の中で燃やしておいてあげる。それでいいでしょ。」
ふいっと彼女が背を向けて歩き出した。
三汰は慌ててほかのゴミを拾い、彼女の後を追う。
「心配しなくても大丈夫よ。」
そんな三汰に、彼女は振り向きもせず言った。
「毎日毎日、ちょっとづつ燃やせば、正月すぎにでもなくなるでしょ。」
彼女の言葉が
音もなく夜空にふわりと舞い上がる。
三汰はその夜空を見上げた。
キラキラキラキラ、寒さで余計に、
星が輝いていた。