私の可愛い泣きべそサンタ
下は普通の服装なのに、顔だけなんでそんなワオー。な仕上がりにしてきてしまったのだろうかこの男は。
「うわ、何本か抜けた。」
痛がるうめき声と、そんな情けないセリフが隣から聞こえる。
…冬のベンチは冷たい。
静香はもう一回腰を浮かし、座りなおした。
「その帽子も、取ったら?」
「あ、そだねー…。」
音もなく、その陽気な三角帽は彼の手の中に納まる。
そんなに大きくもない三汰の手の中には、ゴミと化した綿と、サンタ帽、そして赤いリボンが付いた小さなプレゼントが心もとなく転がっていた。
はぁ…。
静香はため息を吐く。
なんとなく察しが付いたのだ。
冬休み前、ガラスが寒さで白く曇る教室で、サクラが他の友人達何人かと盛り上がっていたことを思い出す。
『ねぇねぇ!サクラはどんなのに憧れるー?』
『私?そうだなークリスマスでしょ?やっぱり、…夜にさ、約束もしてないのにコンコンって窓をノックして、彼がプレゼント持って参上ーっ』
『ベタだねーしかも古い。』
『恋人がサンタかぁ…、あれ?なんか聞いた事ある…。』
『いいじゃん!夢は夢で!ミキは?どんなのがいいの?』
『…とにかく平穏なクリスマス。』
『あははなにそれ!』
『ミキちゃん苦労してるねー。』
………。
耳を大きくしてそんな会話を聞いていたのはこの男だけではない。