私の可愛い泣きべそサンタ
ぱくっ
ほぐほぐほぐ…
静香は眼鏡を湯気で曇らせながらはんぺんを頬張る。
三汰も餅きんちゃくをかじりながら、白い湯気が登る方向を見上げた。
「あの、なんで…」
「ん?」
おずおずと三汰が口を開く。
静香ははんぺんからやっと意識を彼に移し首を傾げた。
ああ、おでんのこと?
静香はそう解釈し、んー、と言葉を選び始める。
本当は、失礼ながらも人知れず笑ってしまったお詫びなのだけれど。
「おでん、嫌いだった?」
「え?いや、好きだよ。あ、ありがとう。」
「ドウイタシマシテ。」
静香はそれだけ言うと、今度は大根に意識を移した。
「あ、いや、そうじゃなくて…」
「?」
どうやら違ったようだ。
静香は再度三汰を振り返る。
一生懸命話そうとしている彼を見つめ、短気なはずの静香は珍しくただじっと彼の言葉を待った。
「その、…俺が言うのもなんだけど。委員長、こんな日になんでこんなところに…?」
こんな日。
それはつまり、クリスマスイブの日に、何故こんな暗い夜道に、という事だろうか。
静香にとってそれは実に簡単な質問だった。
「おでんが食べたくなって。」
「…おでん。」
「そ。おでん。ここ、近所だし。ここのコンビニのおでん好きだし。」
まぁ、わざわざこんな寒い中買いに行くのも面倒くさかったのだが、それ以上に“あ、おでん食べたい。”という欲求の方がまさってしまったわけで。