私の可愛い泣きべそサンタ
「えっ、でも委員長、サクラさんと幼馴染なんじゃ…?」
その情報はいったいどこまで広がっているのか。
静香は頭を抱えたいのをぐっと我慢して腰に手を当てた。
「…行ったとして、サクラの両親が出て来たら、…木之下君どうする気?」
うぐっ、と三汰は声を詰まらせる。
どうやら特に考えていなかったようだ。
静香はくいっと眼鏡を押し上げ説教するように続けた。
「バッタリ顔を見合わせてしまったご両親に、サンタの帽子を被ったあなたはなんて説明するの?彼氏じゃないですけど御宅のお嬢さんに会いにきました?こんな夜遅くに、連絡もいれず?さぞ不審がられるでしょうね。もしかしたら娘のストーカーかなにかかと勘違いされるかもね。
それとも裏から侵入してこっそり窓からサクラの部屋を覗く気?
着替え中だったらどうするの?悲鳴でもあげられたら、あなたがどれだけ言い訳しようが一発で警察沙汰よ。
それにもしサクラが…友達とかと出かけていたら?
木之下君ずっとこっそり隠れてサクラを待つの?帰って来なかったら?木之下君道分からないのにどうやって帰るの?」
現実的な刃物でズバズバズババと切り刻まれるロマンチストな男心をなんとか右手で支え、三汰はボロボロになりながらゆらりと前髪を揺らした。
フラフラと背を曲げる彼に、静香は痛そうに眉を寄せる。
彼女はなんとかして止めたかった。
彼の勇気を。
致命的な一撃が待っているだろう結末から、
どうにか回避させたかった。