ウソつきより愛をこめて
第六章 二度目の恋心
「おい結城、メンバーズ会員向けのクリスマスDMの色校来てるけど、チェックは…」
「はい。終わってます」
「…そうか。…あのさ、お前」
「仕事の話じゃないなら後にして下さい。…いらっしゃいませー。何かお探しですか?」
営業スマイル全開で接客についている私を、橘マネージャーが不服そうな顔で見つめてくる。
ゆりちゃんが抜けて人手が足りない中、先週のクリアランスセールでうちの店舗は全店で売上五位の好成績をおさめていた。
そして怒涛のフル番出勤は、今日で七連勤目に突入している。
持ち前の若さとアドレナリンを武器に、このままクリスマスまで迎える覚悟だって辞さない。
「ねぇ、エリカ張り切りすぎじゃない?一日くらい公休とりなよ。クリスマスまで十二連勤とか…さすがにバカでしょ。橘さんにバレたら殺されるよ?」
「バレやしないよ。わざわざあの人と公休日合わせて、内緒で出勤してるんだから」
「てかなんで自分んちに帰んないの?いい加減、何があったのか教えなさいって」
「…記憶から消し去りたいことだから。本気で勘弁して」
私はあれから、徹底的に橘マネージャーを避けまくっている。
毎日美月の部屋に泊まり込んで、自分の部屋にはほとんど帰っていない。
朝と夜の送り迎えの時間も、なるべく美月を巻き込んで、一緒に橘マネージャーの車に乗ってもらっている。
寧々に少ししか会えなくて寂しそうだけど、そんなの知ったこっちゃない。
彼があの日の朝放ったひと言が、私の怒りに火をつけてしまったのだから。