ウソつきより愛をこめて
「寧々、また明日も積み木やろうな」
「ん!しょうちゃん、だいすきっ」
「えーっ!!」
私すらまだ言われたことのない寧々の“だいすき”が飛び出して、驚愕する。
「…っていうか寧々。いつの間にそんな言葉覚えたの…」
「俺が言ったら、寧々が真似したんだよ。なんだ、悔しいのか?」
「…別にっ」
慌てて視線を逸らした私に手を伸ばし、橘マネージャーが馴れ馴れしく肩に触れてくる。
っていうか私、まだ痕つけたこと怒ってるんですけど!
「やめて」
その手を軽く払って、私は散らばった積み木を片付け始める。
「結城」
寧々に大好きって言ってる橘マネージャーの姿を想像するだけで、胸にこみ上げてくるものがある。
なんでこの人は、こんなに無条件に寧々へ愛情を与えてくれるんだろう。
もしかしたら、寧々が自分の子だと思ってるからとか、それだけじゃなくて。
…“私”との子供だから?
寧々を産んだのが、“私”だから?
「昨日は…悪かった」
上から降ってきたどこか切なさ混じりの声に、積み木を持っていた手が止まる。
「謝るから、だから」
俯いているせいか、顔に血液が集まってくる。
タートルネックの下に隠れた昨日の印が、静かに疼き始めていた。
「…もう、あいつと二人で会ったりするな」