ウソつきより愛をこめて
「明日…橘マネージャーに、大事な話があるの」
「奇遇だな。俺も大事な話がある」
柄にもなく緊張してしまったけど、彼のそのひと言でそんなものはどこかに吹っ飛んでしまう。
いつもはいらっとする爽やかな笑顔も、今はどこかくすぐったく感じて仕方ない。
…恋は盲目って、どうやらこういうことらしい。
「どうせ、いつものあれでしょ」
「…どうかな。いつも以上に期待して待ってろよ」
「私のは、…あんまり期待しなくていいから」
「なんだよそれ。お前は本当に…俺を振り回してばっかりだな」
明日真実を打ち明けて、彼がどんな反応を見せようと関係ない。
例え嫌われたって、罵られたって。
―――自分の気持ちだけは、素直に伝えたい。
「じゃあね。また明日」
「しょうちゃん、ばいばい」
「おー気をつけてなー」
何度も振り返っては、いつまでも手を振っている橘マネージャーの姿を目に留める。
明日が素敵な日になればいい。
二年前の続きを、彼と一緒に迎えたい。
ようやく決心がついた私の心は、もう自分でも恥ずかしいくらいに橘マネージャーのことでいっぱいだった。