ウソつきより愛をこめて
第八章 最後の嘘と涙
「最悪…もう帰りたい…。こんなクリスマス嫌だ」
「あら、エリカ意外と似合うじゃない。さすがね、そんなものまで着こなせるなんて」
「そうですよぉ店長!ゆりより断然イケてますって」
美月とゆりちゃんの二人におだてられても、全然その気になんてなれない。
これさえなければ、毎年恒例のクリスマスセールだっていつもの調子で売上を伸ばせるのに。
(恥ずかしくて売り場に出たくない…)
先ほどの遅番朝礼で、私は運悪く、サンタコスプレ係の当たりくじを引き当ててしまった。
文句を言いたくても、毎年恨みっこなしで誰か1人がやらなきゃいけないから、どうしようもない。
「これは悪意のある短さだわ…」
ふわふわの白い綿毛で覆われたスカートの裾をつまみ上げて、大きく息を吐き出す。
何が悲しくて、クリスマスにミニスカサンタにならなければならないのだろうか。
どう考えてもサンタの帽子をかぶるだけで事足りるのに、これを平気で着させる上層部のお偉いさんは悪趣味すぎる。
これから一日無我の境地に立って働くしかない。
意を決して売り場に出ると、店の中はかなりの人で犇(ひし)めきあっていた。
「いらしゃいませー!」
すでに見世物状態の私だけど、売り場に立てば販売員の血が騒ぎだす。
いつもの倍の声を張り上げて店内を進んでいく。
「わー、店長可愛い!」
「可愛いって言われる年でもないけどね…」
他の社員に引き継ぎを受けていた私は、ちょうどフィッティングルームで接客についていた橘マネージャーと思いっきり目が合ってしまった。