ウソつきより愛をこめて
「マリカ…」
この子の気持ちが、痛いほどよく分かる。
一人の寂しさに負けないように、強くあろうと精一杯虚勢を張っているところなんて私にそっくりだ。
でも…だからこそ、私みたいに間違えてほしくない。
「マリカ私ね。…昔、子供が欲しいくらい好きだった人と今のマリカと同じような気持ちで付き合ってたことがあるよ」
「…え…?」
「相手に不満ばっかりだったけど。それでも好きだから寂しくても我慢して付き合ってた。…そしたら、生理が遅れて来ない月があってね」
「え、エリカ…それって」
「子供が出来たんだって浮かれたよ。順番は違うけど嬉しくて、これでずっとこの人のそばにいられるってそう思った…最低だよね。子供を結婚の切り札にしようとするなんて」
マリカは目に涙を溜めながら、首を一生懸命横に振っている。
「それで…どうしたの?」
「そのこと相談しようと思ったんだけど、全然会えなくて。…結局、ひとりで産婦人科に行った」
あの時の気持ちは今でもよく覚えてる。
橘マネージャーに私だけを見てほしくて必死で。
まだぺったんこのお腹なでながら、彼の喜ぶ顔ばかりバカみたいに思い浮かべてた。
「影では彼女はいないとかって他の女に言われてたんだけどね。私、気持ち強いから…赤ちゃん出来たって言えば彼の心が取り戻せると思った」
「その…赤ちゃんは?」
「…いなかった」
「…え…?」
「初めから私のお腹にはいなかったよ。…ただの生理不順だって言われて。あれだけ絶望したことは、今まで生きててなかったと思う」