ウソつきより愛をこめて

「今まで本当にごめん。マリカ」

「紘人…」

「これからはずっと二人のそばにいる。…いさせてください」

恭しく頭を下げたひろくんを見て、マリカは両手で顔を抑えている。

そのまま大きく頷いたマリカを、ひろくんは腕の中に優しく抱きしめていた。

「エリカ…辛いこと思い出させてごめんね…」

「いいよ。私こそ、一ヶ月間この子と一緒にいられて幸せだった」

そばにいる寧々を抱き寄せて、額に口付ける。

「寧々、私の娘になってくれてありがとう」

「どっちのママも好き!」

声を弾ませてそう言った寧々に、私とマリカはお互いに目を合わせて一斉に笑い合っていた。




「…本当に送らなくて大丈夫?」

「いいよ。これから昔勤めてた店舗に顔出しに行くし。ひろくんはちゃんとマリカについててあげて」

「ママ」

病院の外まで見送りに来てくれた寧々を最後にぎゅっと抱きしめる。

「たまには…仙台に遊びに来てね」

「うんっ!」

元気に返事してくれた寧々の頭を撫でて、私は振り返り駅までの道をゆっくり歩き出していた。



一ヶ月間だけの、幻のような、幸せな時間だった。

大好きな、心から愛してる人と一緒にいられた。



…それだけで、もう十分。

思い描いてた未来は、もう叶えることは出来ないだけど。

橘マネージャーと寧々の家族3人で過ごした日々は。

たとえ偽りでも、―――夢のようなひと時だった。

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