ウソつきより愛をこめて

***

「きゃーっ!!エリカ久しぶりー!!なんで?なんでいるの?」

「…たまたま、知り合いに会いに来たんだ。元旦から仕事お疲れー」

「そっか。仙台のお店って初売り二日からだもんねぇ。エリカのとこも明日はきっとこうなるよ」

ずっと東京の店舗で一緒だった同期の子にそう言われて、戦場のような売り場に目を向ける。

一番ひどいのはやっぱり福袋のコーナーだ。

明日は美月が担当だから、頑張ってもらわないと。

「エリカのお店すごいよねー。冬物アウターの商品部門でダントツ一位とってたじゃん。うちも負けてられないな」

「たまたまだよ。…バイヤーも在庫多く回してくれたみたいだし」

橘マネージャーがやってくれたとはなんとなく言い出せなくて、視線を横に流す。

懐かしい店舗の雰囲気に、私は目を細めて周りを見渡していた。

この場所で、私は彼と出会い、恋をした。

この場所に出向いたのは、またここから全てをやり直したかったから。

…後ろはもう、振り返りたくない。

橘マネージャーへの思いは、この場所に全部置いていく。

「じゃあ、また東京来る機会あったら店寄ってね」

「ゴメンね、忙しいとこ邪魔して…ってわ!」

同期に別れを告げて店から1歩踏み出そうとした私は、勢い余って人にぶつかってしまった。

「…す、すいませ…」

「あれ…お前、結城じゃないか!」

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