ウソつきより愛をこめて

「来なくていいからそこを動くなって言ったのに、なんで勝手に動き回るんだお前は!」

「……ご、ごめ…」

だってそんなの、全然聞き取れなかった。

もう私の顔すら見たくないのかと思ったら、息の仕方まで忘れてしまいそうな程苦しくて。

「行き違いになるとこだったんだ。俺もたった今、仙台から戻ってきたとこだから」

こんなに大勢の人の中から私を見つけ出してくれたことが、奇跡のように思えてしまった。

「おい、聞いてんのか?こっち向けよ」

「今…無、理っ…」

伝えたいことが、たくさんあるのに。

会えたことで感情が高ぶってしまったせいか、涙がとめどなく溢れてくる。

痺れを切らした翔太が私の方に回り込んできて顔を覗くから、思いっきりひどい泣き顔を晒すことになってしまった。

「…なんで泣いてんだ」

ひどく不機嫌そうな声が聞こえてきて、私は身体を固くする。

「あいつとなんかあったのか?」

そう言われて否定の意味で首を横に振ったけど、彼の眉間の皺は深く刻まれたまま。

ひろくんのことはすぐにでも解きたい誤解なのに、今は嗚咽を抑えるので精一杯だった。

翔太は泣いてる私よりも苦しそうな顔で、目尻に溜まった涙を親指でやさしく拭ってくる。

それを繰り返され次第に落ち着いてきた私は、浅い呼吸を繰り返しながらやっと彼の顔を見上げていた。

「…あの、聞いて…?ひろくんは…」


誤解を解こうと思って口を開こうとした私の前に、大きな影が出来る。

次の瞬間、私の唇は翔太に塞がれていた。

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