ウソつきより愛をこめて
涙の雫が何個もこぼれ落ちていく。
翔太のいる方から大きなため息が聞こえてきて、胸が締めつけられるような不安に襲われた。
…きっと呆れられて、めちゃくちゃ怒られる。
もしかしたら、嘘をつく女なんか信用できないって、突き放されるかもしれない。
もしそうなっても、翔太をこれだけ振り回したんだから、それも当然の報いだ。
「……え?」
俯いて顔を上げないでいると、ふいに翔太から左手を引かれ私の足が勝手に前へと踏み出す。
近づいた距離に困惑して控えめに視線を送ると、彼は信じられないようなものを手に真剣な表情を私に向けていた。
「翔太…」
「なんだよ、嘘つき女」
「そ、それ…」
翔太の手にはこの前とは全く違う、純白のジュエリーケース。
中には眩いほどの輝きを放つ、プラチナのペアリングが二つ並んでいて。
「はー…、やられた。お前には、ほんと騙された。さっきの…俺の渾身の覚悟を返せ」
口ではそんなことを言いつつ、翔太の表情が優しい笑顔に変わっていく。
「な、なにしてるの?どうしたの…これ」
「お前わがままだろ?…世界に一つしかない、他には誰も持ってないようなオーダーメイドの指輪がいいんだよな?…出来上がるまで仙台離れられなかったんだ」
「……違う。あれは…」
「いいんだ。…どうせ、婚約指輪の他に結婚指輪も贈るつもりだったんから」
リングをひとつ取り出したかと思うと、彼はあっという間にそれを私の指に嵌めてしまう。
左手の薬指で一際存在感を放つ指輪は、私の指のサイズにピッタリだった。
「あの…?」
「責任取れよ。俺、もう親に嫁と孫出来るから覚悟しといてって、報告してあるから」
「……!!」
「俺と結婚しろ、エリカ」