ウソつきより愛をこめて

その名前を聞いて、身体に緊張が走る。

やっぱり、あの人だったんだ…。

「…奈良橋って、翔太をストーカーしてた人でしょう?」

「お前、それをどこで…」

「…さっき平泉マネージャーに偶然会って、なんとなく事情聞いたから…。その、別れてからの…2年間のことも」

私がそう言った瞬間、翔太の顔色が変わる。

黒い瞳は気怠そうに細められていた。

「…あのオヤジ…、余計なことを…」

「余計なことじゃない。なんで頼ってくれなかったの?翔太がちゃんと言ってくれてたら…私は…」

二年前のことを思い出すだけで、胸が張り裂けそうになる。

なんで私は、一番大事な人を置いて逃げ出してしまったんだろうって。

「わかるだろ。ストーカーする奴なんてろくな人間じゃないんだ。…お前を危険な目に合わせたり、無駄な争いに巻き込みたくなかった」

「……そんなの、言ってくれなかったらわからないじゃない。私はずっと…身体だけが目当てで…一緒にいるのかと思ってたんだから」

「…エリカ…」

「クリスマスの日だって、あの人に何も反論できなくて悔しかった。翔太は私のだって、胸張って言ってやりたかったのに…!指輪だって…同じの見せられて…それで私、翔太にあんなひどいことを…」

繋がっている手に、ぎゅっと力を込もる。

翔太はもう一方の手をこちらに伸ばして、私の頭を優しく撫でていた。

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