ウソつきより愛をこめて
「…あいつの話は、全部デタラメだから。指輪も二年前俺が買ってるところ見て、真似でもしたんだろ」
「うん…わかってる」
「先週仙台まで追いかけてきた奈良橋に、付き合ってくれなきゃ死ぬって…脅されたんだ」
「…それで?どうしたの?」
「もちろんすぐ警察に行った。…そんで、ホテルにおびき寄せたところで捕まえてもらって、…あとはお前の聞いた通り。警察沙汰になったんだ、さすがにあいつも懲りたろ。あっちの親御さんも…俺にはもう近づかせないって約束してくれたし」
「…良かった」
ワイシャツの裾を引き寄せて、彼の胸板に身体を預ける。
規則正しい心臓の音が聞こえて、なんだか心地いい気分になった。
「怪我も何もなくて…本当に良かった」
「…俺が女なんかに襲われる訳ないだろ。しかもあいつ俺に惚れてたわけじゃなくて、復讐したくて付きまとってたみたいだし」
「どういうこと?大学の同級生だったんでしょ?」
「……」
翔太は急に黙り込んで、何かを考えてる。
…言いにくいことなのかな?
首を傾げる私から、翔太はずっと目を逸らしていた。
「……元カノ」
「……!!」
しれっとそう言い放った翔太の言葉に、衝撃が走る。
まるで風船がしぼんでいくみたいに、私の表情からみるみる笑顔が消えていった。