ウソつきより愛をこめて
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(……最悪……)
脇に挟んだ体温計を乱雑に放り投げて、枕に沈み込むように顔を埋める。
首から上が重くて怠くて、極力動かしたくない。
さっき見たデジタル表示は結構高めの三十八度五分を指していて、自分でもちょっと引いた。
「ねぇ寧々、そろそろ起きよ…」
隣でまだ眠り続けている寧々の肩に手を伸ばし、必死でゆさゆさと揺り動かす。
今日は私の仕事が休みだったから、十一時時過ぎまで二人で朝寝坊してしまった。
「…ん~、ママぁ…?」
まだ寝ぼけているのか、寧々は目を瞑ったまま両手を伸ばして私を探している。
いつもならデレデレでここに居るよと教えてあげるけど、今朝は全くそんなことをする余裕がなかった。
お腹減ったよね…。
オムツも替えてないから、気持ち悪いだろうし。
とにかく寧々を着替えさせて、なんでもいいからご飯を食べさせなくちゃ…。
どうやら昨日お風呂上がりに薄着で騒いでいたせいで、しっかり風邪をひいてしまったらしい。
散々忠告してくれた美月の呆れる顔が、頭に浮かんでくる。
起き上がろうと思ってベッドから降りた瞬間、私はよろよろと床に手をついてそのまま動けなくなってしまった。