ウソつきより愛をこめて

大人しく自分のおもちゃで遊んでいる寧々の様子を見つめながら、私はベッドの上に身体を横たわせる。

スマホを手に取るとメッセージが既読に変わっていて、休憩に入ったら様子を見に来ると美月から返信が来ていた。

「…良かったぁ…」

持つべきものはやっぱり親友だ。

呼吸は荒くなってきたし、体温もさっきより上がってきた感じだけど、精神的には随分気が楽になった。



しばらくすると玄関から鍵の開く音が部屋に響いて、私は朦朧としていた意識をなんとか取り戻した。

美月にはもう、感謝してもしきれない。

部屋に上がって来る足音と、ビニール袋の擦れる音が聞こえて来る。

有難い…。

買い物までしてきてくれたんだ。

「美月~…っ」

半泣きで起き上がってベッドから出ようとしたけれど、もう足に力が入らない。

ああこれ相当きてるな…。

「ごめん、私熱あってもう動けそうもないんだわ…」

ベッドに腰掛けた状態で、私は自分の両膝の上に項垂れる。

近づいて来た人影に前から両肩を支えられた瞬間、私の思考は停止した。

大きくてゴツゴツした手とキレイな長い指。

これは決して美月の…女性のものではない。


「無理しなくていい」

「は……?なん、で…?」

ここにいるはずのない橘マネージャーの姿を、私はただ食い入るように見つめていた。

< 43 / 192 >

この作品をシェア

pagetop