ウソつきより愛をこめて
大人しく自分のおもちゃで遊んでいる寧々の様子を見つめながら、私はベッドの上に身体を横たわせる。
スマホを手に取るとメッセージが既読に変わっていて、休憩に入ったら様子を見に来ると美月から返信が来ていた。
「…良かったぁ…」
持つべきものはやっぱり親友だ。
呼吸は荒くなってきたし、体温もさっきより上がってきた感じだけど、精神的には随分気が楽になった。
しばらくすると玄関から鍵の開く音が部屋に響いて、私は朦朧としていた意識をなんとか取り戻した。
美月にはもう、感謝してもしきれない。
部屋に上がって来る足音と、ビニール袋の擦れる音が聞こえて来る。
有難い…。
買い物までしてきてくれたんだ。
「美月~…っ」
半泣きで起き上がってベッドから出ようとしたけれど、もう足に力が入らない。
ああこれ相当きてるな…。
「ごめん、私熱あってもう動けそうもないんだわ…」
ベッドに腰掛けた状態で、私は自分の両膝の上に項垂れる。
近づいて来た人影に前から両肩を支えられた瞬間、私の思考は停止した。
大きくてゴツゴツした手とキレイな長い指。
これは決して美月の…女性のものではない。
「無理しなくていい」
「は……?なん、で…?」
ここにいるはずのない橘マネージャーの姿を、私はただ食い入るように見つめていた。