ウソつきより愛をこめて
「お前…こんな真冬に一枚しか着てないのか?そんなんじゃ風邪ひくの当たり前だろ」
わざとらしくため息をついた橘マネージャーの視線の先には、キャミからはだけた胸元がある。
「ど、どこ見てんの変態…!!」
それに気がついた私は、叫びながらパーカーのジッパーを全力で閉めていた。
「…なんなの、なんでうちにいるの?ってかストーカー?」
「誰がストーカーだ。あんなもんと一緒にするな」
「じゃあなんで…!」
「俺が相沢の代わりに来た。本人にもちゃんと了承は得ている」
「…そんなの、なにも聞いてないしっ…!」
顔が急激に熱くなって、目の前にある橘マネージャーの身体を押し返そうとするけどうまく力が入らない。
片付けるのが面倒くさくて、お酒の缶はリビングのローテーブルの上に放置したまま。
脱いだ洗濯物もソファーの上に山のように積み上がっている。
一応私も女だし、こんな汚い部屋を他人の目には晒したくはない。
「やだ、もう…なんで」
「今日は遅番が三人もいるんだ。早番の俺が抜けたとしても、平日だし人手は十分足りるだろ。…ったく昨日から変なシフトばっかり組みやがって」
それは…あなたが急にやって来たからでしょ…!?