ウソつきより愛をこめて
少し眠れたおかげで身体のだるさがずいぶんなくなっている。
でも節々が痛いから、やはり熱は下がっていないようだ。
着替えた後よろよろと壁を伝いながらリビングに向かった私は、目の前の光景に口を開けたまま固まっていた。
「なに…これ」
「ああ、一通り片しておいたから」
床にもテーブルの上にも塵一つ見当たらない。
溜め込んでいた洗濯物が、洗面所のドラムの中で回っている。
「お粥あるけど、腹減ってるなら今食うか?寧々にはさっきうどん食べさせてやったからな」
「え…まさか作ったの?てか料理とか出来る人だったの?」
「こんなの作ったうちに入んないだろ。まさかお前…こんなことすら出来ないとか言わないよな」
「……出来ないんじゃなくてやらないだけであって」
「だから相沢が色々世話焼いてやってるわけか。納得した」
見た目詐欺だと言われるのなんて慣れてる。
別れたあとなら、橘マネージャーも騙されたとは思わないだろう。
「お前意外と不器用だもんなー。まぁいいんじゃねぇの欠点のひとつくらいあったって」
「……」
バカにされると思ったのに、橘マネージャーはなんでもないことのように私をフォローする。
熱があって良かった。顔が真っ赤なのもそのせいに出来る。
…こういうのは、調子狂うから苦手だ。