ウソつきより愛をこめて

結局何も口にすることは出来なくて、連れて行ってもらった病院で点滴を打ってもらった。

検査の結果からインフルエンザの可能性はなく、ただの風邪とのこと。

薬をもらって車に乗り込むと、橘マネージャーに改めてお礼を言った。

「ありがとうございました。寧々の面倒もずっと見ててくれて。あの、色々買って来てくださったみたいなので…受け取ってください」

運転席の橘マネージャーに渡そうと思い、財布からお札を取り出す。

「いらねぇよ。上司が部下に金出させたりすると思ってんのか?」

「でも…」

「お前さえよければ、たまに寧々の遊び相手になってやりたい。俺にお礼したいなら、了承してくれ」

「……」

橘マネージャーはずるい。

ここまでしてもらって断れるわけがないのに。

「…わかりました」

「寧々、また遊びにくるからな」

「わーいっ」

女ならこんな小さい子まで夢中にさせてしまうのか。

車内でいちゃいちゃする寧々と橘マネージャーに、もやもやしたものがこみ上げてくる。

それがどちらに対する嫉妬なのか、頭が働かなくてよくわからない。

しばらくするとマンションに着き、このまま帰ると思った橘マネージャーは、また寧々と手を繋いで中に向かって歩き出してしまった。



< 56 / 192 >

この作品をシェア

pagetop