ウソつきより愛をこめて
結局何も口にすることは出来なくて、連れて行ってもらった病院で点滴を打ってもらった。
検査の結果からインフルエンザの可能性はなく、ただの風邪とのこと。
薬をもらって車に乗り込むと、橘マネージャーに改めてお礼を言った。
「ありがとうございました。寧々の面倒もずっと見ててくれて。あの、色々買って来てくださったみたいなので…受け取ってください」
運転席の橘マネージャーに渡そうと思い、財布からお札を取り出す。
「いらねぇよ。上司が部下に金出させたりすると思ってんのか?」
「でも…」
「お前さえよければ、たまに寧々の遊び相手になってやりたい。俺にお礼したいなら、了承してくれ」
「……」
橘マネージャーはずるい。
ここまでしてもらって断れるわけがないのに。
「…わかりました」
「寧々、また遊びにくるからな」
「わーいっ」
女ならこんな小さい子まで夢中にさせてしまうのか。
車内でいちゃいちゃする寧々と橘マネージャーに、もやもやしたものがこみ上げてくる。
それがどちらに対する嫉妬なのか、頭が働かなくてよくわからない。
しばらくするとマンションに着き、このまま帰ると思った橘マネージャーは、また寧々と手を繋いで中に向かって歩き出してしまった。