ウソつきより愛をこめて
まさか泊まるつもりじゃないよね…。
後ろから疑念の眼差しを向けるも、彼は寧々との会話に夢中で全く気づいていない。
自分の荷物全然持ってないから、それはないか。
家事もやってくれるし、寧々もなついてるから…ただそれだけの理由。
彼がこれからいなくなることにどこかがっかりしてる自分に、そう言い訳した。
「冷蔵庫にプリンとゼリー入ってるから、食えそうになったらなんでもいいから口に入れろよ。あと脱水にも気をつけろ。スポーツドリンクも買っておいたからな。お粥は明日の朝、温めるだけで食えるから。さっき雑炊風に味つけ直したから寧々も食えると思う」
「…オカンか」
あまりのいい主婦ぶりについ心の声が口に出てしまう。
「さっきみたいに素直にお礼は言えないのか?」
「ありがとうございます。大変助かりました」
寧々と一緒に玄関でぺこりとお辞儀した私を、橘マネージャーはじっと見つめていた。
「…?なにか」
「あ、いや…その…」
心なしか頬の辺りが赤い気がする。
彼は掌で自分の口元を隠すように覆っていた。
「俺に触られても、平気か?」