ウソつきより愛をこめて
「…?」
言われたことの意味がわからなくて、私は首をかしげる。
…ああ、寧々のことか。
かなり好かれてると思うけど、そういう自覚はないのだろうか。
「別れ際に抱きしめたいならどうぞ、ご自由に」
「…言ったな」
その気持ちならわからないでもない。
私なんて保育園での別れ際、頬ずりした上でほっぺにキスまでするから、毎回由子を呆れさせている。
「……!!」
だけど次の瞬間腕の中に引き寄せられたのは、紛れもなく私自身で。
隙間なく密着した身体の感触に、頭の中が一気に沸騰した。
「……っ!?」
すごい力で顔を胸に埋められて、思うように声が出せない。
後頭部にまわった掌が、私の髪を撫で、思考を麻痺させる。
香水がほんのりと混じった匂いが懐かしくて、気がどこかに遠のきそうになる。
気がついたら今にも唇がくっつきそうな程、整った顔が間近にあって。
「……うっ…!」
私は渾身の力で、拳を振り抜いていた。